【取材】店内優先で空き時間を売上に!人気店『ラーメンタロー』のUber Eats運用術
「すでにお店は繁盛しているから、これ以上現場の負担を増やしたくない」
「うちは厨房が狭いから、デリバリーを始める余裕はない」
こうした理由で、Uber Eats(ウーバーイーツ)の導入をためらっている人気店のオーナー様も多いのではないでしょうか?
特に、ラーメン店のように専門性が高く、店内オペレーションが確立されているお店ほど、デリバリーとの両立は難しい課題です。
そこで今回は、そうした人気店ならではの悩みに向き合い、独自のバランス感覚でUber Eats を軌道に乗せた「ラーメンタロー 大森の陣」の店長・渋谷さんにお話を伺いました。
店内クオリティを最優先する運営方針や、手狭な厨房での資材置き場の確保術、売上を10〜15%上乗せした実績、そしてリアルな配達トラブルまで、人気店が”無理なく”デリバリーを続けるためのヒントが満載です。
新たな一手としてデリバリーを検討している飲食店オーナー様は、ぜひ参考にしてみてください。
Uber Eatsの出店に関する基本情報については、以下の記事で詳しく解説しています。
| 店舗名 | ラーメンタロー 大森の陣 |
|---|---|
| 住所 | 東京都大田区大森北1-3-12 |
| 営業時間 | 月~土 11:00~15:30、17:00~23:30 日曜日 11:00~15:30、16:30~21:00 |
| 詳細ページ | 公式サイト Uber Eats掲載ページ |
※申し込み後に担当者がつくので、登録後も安心して始められます。(Uber Eats店舗向け公式ページ)
自家製麺が人気の二郎系「ラーメンタロー」その特徴とこだわり

――はじめに、こちらのお店「ラーメンタロー 大森の陣」について教えていただけますか?
いわゆる二郎インスパイア系のラーメン店で、五反田にもお店があります。特徴は……やっぱり量が多い(笑)
あと、全ての素材にこだわっています。小麦粉、醤油、肉、もやし。基本的に、いつも使っている固定のものしか使いません。
麺は自家製で、社長がこだわり抜いて開発したもの。お客さんからも「麺がおいしい」と言っていただくことが多いですね。
――一番よく出る人気メニューは何ですか?
オーソドックスな「らーめん」ですかね。厚切りの黒豚チャーシューが2枚乗っています。
店では「小ラーメン」という名前で販売しているんですけど、それでも麺が250gあるので一般的なラーメンより断然多いですよ。
Uber Eats導入の決め手と、出店準備段階での課題
――Uber Eats(ウーバーイーツ)を始めたのはいつ頃でしたか?
はっきりは覚えていないのですが、2023年あたりかと思います。一番の理由は、店が空いている時間を有効に活用できると考えたから。社長の判断ですね。僕自身も、「どのぐらい出るのかな」って興味はありました。
――準備段階で大変だったことは何かありますか?
デリバリー用の容器を置く場所をどう確保するか、というところですね。もともと狭い店内なので。
結局、店内用のどんぶりをカウンターに出して、空いたスペースにデリバリー用の容器を置くことにしました。容器の在庫は、倉庫になっている2階に保管してあるので、減ってきたらそこから補充する形です。
そういえば、最初に買った容器がちょっと小さくて、トッピングの注文が入ると器に入りきらなくなることがありました。スープがない「まぜそば」の容器として使い切りましたけど、容器は何百という単位で買うものなので慎重に選んだほうがいいですね。
――お店側の体制としては、特に変わらず?
そうです。1人がラーメンをつくって、1人がサポートに回るのが基本。そこはデリバリーを始めてからも変わっていません。
Uber Eats の注文を受け付けているのは、店舗の営業時間と同じです。

Uber Eatsに店舗を登録する方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
Uber Eats売上は店内比15%でも「販促はしない」無理なく続ける運営術
――実際に始めてみて、Uber Eats(ウーバーイーツ)はどれくらい売上につながっていますか?
ざっくり言うと、大森の店舗で店内売上の10~15%くらいですね。
デリバリーに関しては五反田の店舗のほうがかなりよく出ていますよ。扱っている商品は全く同じなので、単純に五反田のほうが人口が多いのが影響しているのかなと思います。
――曜日や時間帯、天気などによって、注文の入り方に何らかの傾向がありますか?
はっきり違いを感じるのは、雨の日と休みの日。皆さんが家にいがちな状況のときほど注文が多くなりますね。
でも、それは言い換えれば店が暇になっているということなので、出前が増えるのはちょうどいいんです。
――Uber Eats の売上を伸ばすために取り組んだ施策などはありますか?
正直なところ、うちの場合は特別なことはそんなにしてないですね。あくまでメインは店内で、空いている時間帯をカバーするのがデリバリーという位置づけ。Uber Eats が実施しているキャンペーンなんかにも参加していないです。
あまりに忙しくなって、お店のほうが回らなくなると困りますから。負担が出すぎないようにバランスを取りながらやっています。
――取材前、平日の15時半頃にお店の様子を覗かせていただきましたが、まだまだお客さんがたくさんいらっしゃいましたね。
ありがたいことに、それなりにお店は繁盛しています。
この辺りに二郎系のお店はそんなにないので、二郎系が好きな人はうちのことを知ってくれていますし、常連のお客さんが多い。だからこそ、お店での接客のクオリティが下がるようなことがあってはいけないなと思っています。
Uber Eatsの店舗の売り上げを上げる方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
――Uber Eats での価格設定はどのように決めていますか?
その辺りも社長の管轄なのですが、お店に入ってくる金額が店舗でラーメンを売ったときと同等になるような設定をしている、と聞いています。
――ちなみに、販売している商品は店内もデリバリーも同じですか?
基本的に同じです。細かいことを言えば、お店では無料でできるトッピングをUber Eats では有料にさせていただいています。
お店で食べると最初からラーメンの上に乗っているものが別添えになるので、途中で「味変」を楽しめるのはUber Eats ならではと言えますね。
それと、スープの量に関してはデリバリーのほうが多めになっています。商品を受け取ってご自宅のどんぶりに移して召し上がるお客さんもいるのですが、そのときに使うどんぶりによってスープの量がすごく少なく見えることがあるんです。
二郎系なのにボリュームが物足りないと思われるのは良くないので、小ラーメンでも大盛用の量のスープを入れるようしています。

デリバリー4社を併用してもUber Eatsが半数を占める理由
――現在は、他社のデリバリーにも手を広げられているんですよね。
そうですね。Uber Eats(ウーバーイーツ)を皮切りに、出前館、Wolt(ウォルト)、Rocket Now(ロケットナウ)。全部で4社を併用しています。
――各デリバリーサービスの注文割合はどんな感じになっていますか?
注文の数にはかなり差があります。肌感覚ですが、Uber Eats の注文が「5」だとすると、出前館が「1」、Woltは「0.1」、ロケットナウは「3」くらいの比率ですね。
ロケットナウはまだ始めたばかりで、クーポンを配っているんです。それがあるから多めに出ていますけど、しばらくしたら落ち着く可能性はありますね。
――各サービスとの相性もあると思いますが、Uber Eats の割合がかなり高いですね。
Uber Eats だけトッピングができるようになっているのも大きいかもしれません。Uber Eats では、「野菜」「ニンニク」「アブラ(背脂)」「削り節」「辛あげ(辛い天かす)」など、お客さんの好みに合わせて有料でトッピングができるのですが、他社さんは一律でトッピングを受け付けていないんです。
これも店舗の負担が増えすぎないようにする省力化の一環です。

他のフードデリバリーとの比較については、以下の記事で詳しく解説しています。
配達トラブルへの対策と、店舗側ではコントロールできない課題
――できるだけ店舗運営に無理が生じないようにするというお話ですが、オペレーション上で工夫されていることは何かありますか?
容器やカトラリー類、トッピングなどデリバリー用の一式は全部1カ所にまとめて置いて、効率よく作業ができるように準備しておく。
あとは、配達中のトラブルが出来るだけ起きないように、しっかりと梱包することくらいですかね。
Uber Eats を始めたばかりの頃、配達パートナーさんの持ち方の問題なのか、容器が破損したり中身がこぼれてしまったりすることが何度かあったので、袋を二重にする、きちんと縛るといったところを丁寧にやっています。
――配達パートナーへの受け渡しのところでミス防止の取り組みなどはされていますか?
当たり前のことですけど「番号を確認してから持っていってください」と必ず言うようにはしています。
あとは気持ちよく配達していただきたいので、「よろしくお願いします」と毎回伝えるようにもしています。
実際、取り違えなどのミスはたまに起こります。特にうちは4つのサービスを並行しているので、間違いが起きやすい。
それと、10分、20分と経ってもなかなか取りに来てくれないこともありますね。こちらではコントロールできない部分なので、今後改善を期待したいところではあります。
あと、ごくまれにですけど、全然関係ない人が配達パートナーのふりをして持って行っちゃうこともあるんです。
――えっ!? それは悪意があって、ということですか。
そういうことでしょうね。本当は、受け渡しのときにスタッフが付きっきりで確認するような体制がとれればいいのですが、そこまではなかなかできないのが現実なので……。
そういうことが起こり得る、ということは頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
※難しい準備や機材は不要。すぐに始められます。(Uber Eats店舗向け公式ページ)
これからUber Eats出店を検討する飲食店へのアドバイスと今後の展望

――Uber Eats(ウーバーイーツ)に出店してよかったと感じるのはどんなときでしょう?
やっぱり売上が伸びたところですよね。特に暑い夏場はラーメンの売れ行きはどうしても落ちるので、そこをカバーしてくれるのは非常に助かっています。
――デリバリーで今後、力を入れていきたいと考えていることは何かありますか?
余裕があれば、Uber Eats 以外でもトッピングができるようにしたいな、とは思っています。売上は増やしたい。でも負担は増やしたくない。そこのせめぎ合いですよね。今も模索中です。
――最後に、これからUber Eats をやってみようと考えている飲食店の方に対してアドバイスがあれば教えてください。
すき間時間を活用できるので、基本的にはやってみたほうがいいと思います。
気を付けるべきこととしては、資材の置き場所ですかね。それまで必要のなかったものが新たに増えることは間違いないので。どこに何を置いて、どう店を回すのか。それを頭の中でしっかり組み立ててから始めるのがいいのではないでしょうか。
あとは、実際にスタートしてから出てくる課題を一つひとつ解決していく、ということだと思いますよ。
――渋谷さん、お忙しいところ取材にご協力いただき、ありがとうございました!
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(取材・文:日比野恭三)



